人間ドック・健診Q&A

基礎知識や施設選び・受診のコツ、検査結果の活かし方まで人間ドック・検診にまつわる、気になること、わからないことを集めました。

Q

人間ドック受診の適切な頻度の目安は?

人間ドックは会社の定期健診などに比べ、かなり詳しく調べるので、検査結果が「異常なし」であれば、しばらく受診しなくていいですか?

A今回、異常が見つからなかったからといって、これからずっと「異常なし」の状態が続くとは限りません。また、今回は見落とされた小さな異常が、時間とともに大きくなることもあります。人間ドックは、定期的に受けていただきたいものです。

人間ドックを受ける間隔として、私は右図のような計算式を考えています。
50歳以前でも、人間ドックで異常が見つかったら、病状の経過や回復の度合い、合併症の有無を調べるために、それ以後は毎年人間ドックを受けることをおすすめします。
病気の芽は、早く見つけて治療を始めたら完全に摘み取ることも可能です。そのためにも定期的に人間ドックで検査を受けてください。
Q

再検査までに気をつけることは?

人間ドックを受診した結果、再検査を受けるように言われました。再検査までは少し時間があるのですが、何か気をつけておくことがあれば教えてください

A生活習慣を改めない限り、数値が悪いままのものがあります。その典型的な例が、中性脂肪値です。
中性脂肪値が高い時は、3カ月後の再検査までに改善しておくべき食事や運動などの生活習慣の注意書きが渡されます。それをもとに、自分なりに生活習慣を改善してから再検査を受けましょう。
検査の数値が下がっていれば、このまま様子を見ようということになりますし、もし、生活習慣を改善しても中性脂肪値が下がっていなかったら、遺伝や環境などの背景があることが考えられますから、薬物治療が必要になります。
ですから、再検査までの期間は、自分なりに生活習慣を改める期間にしてください。
ただし、再検査の結果が良くても、それ以後の生活習慣が元に戻っては困ります。せっかく身に付けた良い生活習慣を続けてください。
Q

人間ドックさえ受けていれば安心?

毎年、欠かさず人間ドックを受けるようにしています。特に数値にも問題ないし、人間ドックは全身を見てくれるので信頼しています。それでもオプションは必要なのでしょうか

A「人間ドックさえ受けていれば安心だ」と考える人もいますが、それは間違い。人間ドックとて万全ではないのです。
例えば、標準的な人間ドックでは、脳の検査は行いません。
目の検査では、近視や緑内障は検査できますが、老眼や乱視は検査しません。
また、腹部超音波で肝臓や胆のう、すい臓などの異常を調べますが、すい臓は体の奥深くにあるために、たとえがんが発生していても超音波では発見できないこともあります。
2万種類以上もある病気をすべて人間ドックで発見、診断することは不可能です。生活習慣病や各種がんの内、人間ドックで発見、診断が可能なのは、標準的な1日ドックで60%ぐらい、オプション(別料金による追加検査)などを付けてもせいぜい80%ぐらいです。なお、職場の一般健康診断では40%ぐらいを見つけると思ってください。
お金を掛ければ発見する病気の数を増やすこともできますが、そうやって微細な異常を発見することが、本当に健康維持に必要かどうかは、わかりません。むしろ、60~80%の検査の中に、健康を維持するために重要な検査が入っていることが多いのです。
では、60%ぐらいの人間ドックを、70%、80%に上げるには、どんなオプションを付けたらよいでしょうか。
例えば50歳代女性の場合は、1日ドックに加えて、


●乳房の検診(主に乳がんの発見) : 触診、マンモグラフィ検査
●女性(婦人科)検診(主に子宮がん、卵巣がんなどの発見) : 内診、細胞診、経腟超音波検査
●大腸の検査(女性のがん死因の第一位である大腸がんの発見) : 便検査などで「陽性」と疑われたら、大腸内視鏡検査や注腸バリウム検査などを受ける
●骨量の検査(骨粗しょう症の発見) : 骨密度の測定

などのオプションを加えておくと安心です。
脳卒中や心筋にかかった家族がいる人は「脳ドック」や「心臓ドック」、前立腺がんにかかった家族がいる人は「前立腺腫瘍マーカー PSA」、血糖値が高めの人や肥満の人は「糖尿病ドック」、喫煙する人は「肺がんドック」を加えるなど、自分の家族歴や体質、生活習慣から気になる部位の専門ドックを付けておくと、さらに安心です。
Q

マンモグラフィと超音波、どちらを受ける?

乳がん検診に、マンモグラフィと超音波の2種類があるのですが、違いがわかりません。選ぶ基準があれば教えてください

A乳がんも、早期発見が生存率を大きく左右する病気です。
乳房は年齢だけでなく個人差が大きいため、マンモグラフィと超音波のどちらを選ぶかは難しいところですが、一般的にいって、30代ぐらいまでの女性は乳腺が発達してマンモグラフィには写らないことが多いため、超音波検査をおすすめします。マンモグラフィは、30代では家族内に乳がんの方がいらっしゃる場合は別として、一般には40代ぐらいからやっていくほうがよいでしょう。40代以上では、超音波とマンモグラフィを隔年で交互に受診するか、または毎年を両方受診するのが望ましいでしょう。
Q

正しい結果を得るための受診前の注意点は?

初めて人間ドックを受けることにしたのですが、どんなことに気をつけたらいいでしょう。何か特別な準備が必要なのでしょうか?

A人間ドックは半日や1日という短い時間で行われます。そのため、正確な検査を行うには、受診者に協力してもらわなければならないことがあります。例えば、受診申し込みの後で送られてきた問診カードにきちんと答える、便潜血検査のための便を採って当日持参する、検査がある場合には、これも正しく採る、などです。 人間ドックでは、問診事項はカードに記入する形式になっています。項目数が多くて面倒でしょうが、検査結果の判断や全身状態の把握には重要です。体が不自由で書けない人以外は、必ず本人が、正直に記入してください。
もちろん、前日何時以降は飲食をしないようになどという注意事項を守ることも重要です。当日の朝のコーヒーや紅茶なども摂取してはいけません。内臓の超音波検査で画像が見えにくくなることがあります。どうしてものどが渇いて、朝方に水を大量に飲んでしまった、などという場合にも、検査開始の前に、係員や看護師にそのことを伝えてください。
また、薬の成分が検査数値に大きく影響を与えることが、よくあります。
時々風邪で薬を飲んでいる人がいますが、これも本来は服用しないで受診していただきたいところです。 血圧や糖尿病などで、毎日どうしても薬が欠かせない人には、当日の朝だけ休んで、ドックが終了したら直ちに服薬してもらうこともあります。
不安を感じるときには、主治医や受診するドックに問い合わせたり、当日に看護師や検査の担当者にその旨を伝えておきましょう。


<人間ドックを受ける際に守らなければいけないこと>
問診カードには詳しく、正直に記入する
指示された便や痰の採取は、必ず指示どおりの方法で採取して持参する
前日からの飲食の禁止は、必ず指示どおりに行う
そのほか、受ける検査によって指示されたことがあったら、指示どおりに行う
やむを得ず指示どおりにできなかったことがあったら、当日、検査開始の前に係員や看護師に伝える
前日に過度の飲酒は避ける
普段の生活どおりで受けることが望ましい
Q

再検査って必ず行かなければいけないの?

健康診断で「要精検」と言われました。以前にも「要精検」が必要だと言われて、行ったのですが、結果は「異常なし」。再検査は必ず行かなければいけないわけではないのでしょうか

Aせっかく人間ドックを受診しても、結果を正しく生かしていない人は大勢います。要精検、要治療と言われたのに、「重大な病気が発見されるのではないかと思うと怖くて精密検査に行けない」のでは、なんのために人間ドックを受けたのか、わからなくなってしまいます。
人間ドックは、病気を早期発見して治療するだけでなく、将来重大な病気につながる可能性のある生活習慣のゆがみ(食事の偏り、運動不足、喫煙習慣など)に気づき、それを正すためにも重要な指標となります。人間ドックの結果は最大限に生かしましょう。
自覚症状がないうちに受ける人間ドックでは、異常が早期に発見されることが多いのですから、仮に重大な病気が疑われたとしても「見つかってよかった」と思って精密検査を受けましょう。ここで立ち止まってしまうと、早期発見できたかもしれない病気が手遅れになることもあります。
また、検査結果は万能ではありません。たとえば大腸がんを見つける「便潜血検査」で陽性(血が混じっている)でも、精密検査の結果、大腸がんではなく、出血の原因は痔だったということも多々あるのです。
とはいえ、一度、そういうことがあったために、「どうせ今度も痔だろう」と思って精密検査を受けなかったら、大腸がんだった、ということもあり得ますから、検査結果の指示には、素直に従いましょう。
特に、「要精密検査」や「要治療」という場合は、ある程度悪くなっている可能性もありますので、必ず受けてください。
なお、「要治療」では、場合によっては治療しなくて済むこともありますが、「異常」と判定されていることには変わりありません。必ず受診しましょう。
Q

タバコを吸わなくても毎年検査を受けるべき?

現在30歳ですが、今までタバコを吸ったことがなく、毎年の検査で異常もないので、X線を浴びたくないし、胸部レントゲン写真を撮るのをやめようかと思います。

Aタバコを吸わない人でも肺がんや肺の病気になることがよくあります。受動喫煙や化学物質に対するアレルギー、また最近は、肺炎や結核などの病気も増えています。レントゲンの撮影による被ばく量は、ごくわずかですから、できれば年に1回は胸部レントゲンの検査を受けておきましょう。
Q

胃カメラと腹部エコーは同じ日に検査できない?

ある病院で検査を受ける時に、胃カメラと腹部エコー検査は同じ日にできないと言われました。忙しくて2日間も検査に費やせず、困っています。

A同じ日に行い、一日で済む病院もあると思います。ただし、胃カメラを飲んで、胃や食道に空気が入り込むと、超音波(エコー)検査では空気や骨の陰になって観察しにくくなることがあるので、同じ日に検査をする場合は、腹部エコーを先に行います。